Topic N1

N1 562📖 Reading

2. Society - The Illusion of Empathy

N1 Reading lesson 2

📄Passage

現代げんだいにおけるコミュニケーションの主戦場しゅせんじょうがインターネット空間くうかんへと移行いこうしたことにともない、我々われわれ他者たしゃ日常にちじょう感情かんじょう瞬時しゅんじにアクセスできるようになった。「いいね!」という単一たんいつ記号きごうのみで共感きょうかん表明ひょうめいし、あたかも世界中せかいじゅう人々ひとびと無意識むいしきのレベルでつながっているかのような万能感ばんのうかんおちいる。しかし、そこで脊髄反射的せきずいはんしゃてきわされる感情かんじょう応酬おうしゅうは、たしてしん意味いみでの「共感きょうかん」とるのだろうか。

デジタルデバイスの画面越がめんごしに情報じょうほうは、つね複雑ふくざつ文脈ぶんみゃくから恣意的しいいてきられた断片だんぺんにすぎない。発信者はっしんしゃがその言葉ことばつむぐにいたった深刻しんこく葛藤かっとう不可視ふかし歴史れきし想像そうぞうすることなく、しの感情かんじょうだけに過敏かびん反応はんのうしてしまう。このような表層的ひょうそうてきなやりりを「共感きょうかん」とたか評価ひょうかするのは、浅薄せんぱくきわまりない。むしろ、それは自己じこ無意識的むいしきてき願望がんぼう他者たしゃ強引ごういん投影とうえいした「同調どうちょう」ごときものであるとわざるをない。安易あんい共感きょうかんへの渇望かつぼうは、ときとして暴走ぼうそうする集団心理しゅうだんしんりあおり、独善的どくぜんてき正義せいぎ美名びめいのもとに、異質いしつ他者たしゃ容赦ようしゃなく排斥はいせきする兇器きょうきへと容易ようい変貌へんぼうする。

つまり、我々われわれ安堵あんどおぼえる「いいね」の連鎖れんさは、相互理解そうごりかいとは対極たいきょく位置いちする自己満足じこまんぞくたわむれにぎないのだ。しん共感きょうかんとは、本質的ほんしつてき理解りかいない相手あいての「絶対的ぜったいてきからなさ」をいだきながら、それでもなおあゆろうとこころみる、泥臭どろくさくも徹底的てっていてき孤独こどく作業さぎょうであるはずだ。自分じぶんとは相容あいいれない異質いしつ価値観かちかん目前もくぜんにしたとき、それを条件反射的じょうけんはんしゃてき否定ひていするのではなく、その深層しんそうにあるいたみにおもいをせること。そのような他者たしゃへの重層的じゅうそうてき想像力そうぞうりょくいたつながりなど、アルゴリズムにおどらされているだけの、砂上さじょう楼閣ろうかくのごとくもろいものにほかならない。

Questions

1

筆者ひっしゃはデジタル社会しゃかいにおける「いいね!」の機能きのうをどのように評価ひょうかしていますか。

A.しん意味いみでの共感きょうかんはぐくむための、きわめてすぐれた即時性そくじせいコミュニケーションツールである。
B.孤独こどくかんじることなく、無意識むいしきのうちに他者たしゃふかつながるための本質的ほんしつてき橋渡はしわたしである。
C.表面上ひょうめんじょう同調どうちょううなが記号きごうにすぎず、相手あいて背景はいけいにある葛藤かっとう見失みうしなわせるおそれがある。
D.複雑ふくざつ対面たいめんでのやりりを省略しょうりゃくし、だれもが平等びょうどう感情かんじょう共有きょうゆうできる画期的かっきてき発明はつめいである。
2

文脈中ぶんみゃくちゅうの「同調どうちょう」とは、筆者ひっしゃ見解けんかいによればどのような行為こういしていますか。

A.共通きょうつう趣味しゅみ思想しそう仲間なかまをインターネットじょうさがし、コミュニティを形成けいせいすること。
B.発信者はっしんしゃへの想像力そうぞうりょくいたまま、自己じこ無意識的むいしきてき願望がんぼう相手あいて無理むりやりげかけること。
C.社会しゃかいのルールや集団しゅうだん倫理りんりしたがい、自分じぶん意見いけんおさんで平和へいわたもとうとすること。
D.相手あいてからなさをいだきながら、孤独こどく試行錯誤しこうさくごかさねて相互理解そうごりかいいたること。
3

筆者ひっしゃかんがえる「安易あんい共感きょうかん」の危険性ききんせいとして、もっと適切てきせつなものはどれですか。

A.真実しんじつとフェイクニュースの境界線きょうかいせん曖昧あいまいになり、社会全体しゃかいぜんたい混乱こんらんおちいること。
B.暴走ぼうそうする集団心理しゅうだんしんりによって、自分じぶんたちと異質いしつ価値観かちかん他者たしゃ正義振せいぎぶって排斥はいせきしてしまうこと。
C.ひととのかかわりが希薄きはくになり、だれもが他人たにんたいして冷淡れいたん無関心むかんしん態度たいどるようになること。
D.思考停止しこうていしおちいり、アルゴリズムに行動こうどうすべてを予測よそくされて支配しはいされること。
4

第一段落だいいちだんらくの「万能感ばんのうかん」の理由りゆうとして筆者ひっしゃ示唆しさしているのはどれですか。

A.世界中せかいじゅうのあらゆる最新情報さいしんじょうほうを、一瞬いっしゅんにして検索及けんさくおよ収集しゅうしゅうできるようになったため。
B.言葉ことばによるコミュニケーションの限界げんかいえ、デジタルでこころをコントロールできるとしんじたため。
C.記号きごうひとつすだけで、世界中せかいじゅう人々ひとびと無意識むいしきのレベルで緊密きんみつつながっていると錯覚さっかくするから。
D.インターネット空間くうかんにおける匿名性とくめいせいが、普段ふだんおさんでいる才能さいのう解放かいほうしてくれるから。
5

筆者ひっしゃかんがえる「しん共感きょうかん」にかんする説明せつめいとして、文脈ぶんみゃくもっと合致がっちするものはどれですか。

A.共通点きょうつうてんつけし、一切いっさい葛藤かっとう排除はいじょして平和的へいわてき関係かんけい構築こうちくすること。
B.自分じぶん意見いけん完全かんぜんり、相手あいてのすべてを無条件むじょうけん肯定こうていすること。
C.絶対的ぜったいてき理解りかいできない部分ぶぶんがあることをけつつ、相手あいて深層しんそうにあるいたみを想像そうぞうしようと苦闘くとうすること。
D.断片的だんぺんてき情報じょうほうをつなぎわせ、SNSのアルゴリズムを駆使くしして相手あいて心理しんり分析ぶんせきすること。
6

文章全体ぶんしょうぜんたい論旨ろんしとして、筆者ひっしゃもっと主張しゅちょうしたいことはなにですか。

A.複雑ふくざつ現実社会げんじつしゃかいからげ、デジタル空間くうかんでのみ自己満足じこまんぞくるべきである。
B.安易あんいな「いいね」の連鎖れんさしん共感きょうかんではなく、他者たしゃたいする重層的じゅうそうてき想像力そうぞうりょくった泥臭どろくさあゆりこそが不可欠ふかけつである。
C.他者たしゃ完全かんぜん理解りかいすることは不可能ふかのうなのだから、無理むり共感きょうかんしようとする努力どりょく意味いみたない。
D.アルゴリズムに支配しはいされたSNSは有害ゆうがいであるため、ただちにアカウントを削除さくじょして対面たいめんでの対話たいわもどるべきだ。

📚Key Vocabulary

主戦場

しゅせんじょう

main battlefield/primary arena

恣意的

しいいてき

arbitrary

葛藤

かっとう

conflict/inner struggle

浅薄

せんぱく

shallow/superficial

排斥

はいせき

exclusion/boycott

兇器

きょうき

lethal weapon

戯れ

たわむれ

play/pastime

独善的

どくぜんてき

self-righteous

相容れない

あいいれない

incompatible

重層的

じゅうそうてき

multi-layered

✏️Grammar Points

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